台風

 北半球の東経100度~180度の北西太平洋で発生し、中心付近の最大風速が秒速34ノット(17.2m)以上になる熱帯低気圧のこと。「台風」という言葉の由来はさまざまな説があって、正確なところは分かっていない。以下のような説がある。

①現在の中国広東省・福建省あたりで「颱風」と呼ばれていたものが変化した。「颱」の字が文献に登場するのは中国清朝初期のころから。17世紀の詩人・王漁洋は「颱風」を台湾近海に発生する特有の大風としており、中国南方方言の「大」の音訳が「颱」であるともいわれている。琉球王国(現在の沖縄)と中国の進貢貿易が盛んな頃の遭難記録に「颱風」という字が使われていたともいわれている。この言葉がポルトガル人・アラビア人たちによりヨーロッパに伝わり、英語の「タイフーン(typhoon)」の語源となった
②説①の英語訳「タイフーン(typhoon)」を日本で「颱風」と当てた
③ ギリシア神話中の嵐の中でゼウスと戦った巨人で風の神の「テューフォン(τυφων・typhon)」を由来とする英語名「タイフーン(typhoon)」、またはフランス語の「ティフォン(typhon)」から来た。なおこのギリシャ語は「旋風」の意味でも使用されている
④アラビア語で「洪水・嵐」という意味の「トゥーファーン(tufan)」を由来とする「トゥーフォン(tuffon)」が英語の「タイフーン(typhoon)」となり、それを日本で「颱風」と当てた。9~10世紀ごろのアラブ人たちは、インド経由で西アジアや中国との交易が盛んだったことや、宋や元の時代の中国にはイスラム船が頻繁に来航していたことから、このアラビア語が中国語に転じたとも考えられる。

 いずれにしても、日本へは英語経由で来たという説が最有力である。
 明治時代以前「台風」は「野分(のわき・のわけ)」や「大山嵐(おおやまじ)」と呼ばれていた。
 「野分」は「野の草を吹き分ける風」という意味で、二百十日から二百二十日頃に吹く強い風を指す。古くは『源氏物語』第二十八帖「野分」の中で「野分例の年よりもおどろおどろしく」という記述があり、江戸時代の俳人・松尾芭蕉の句にも「吹き飛ばす石は浅間の野分かな」というものが見られる。
 一方の「大山嵐」は「農作物に多大な被害を及ぼす突風」のことを指す「やまじ風」の特に大きなものを指す言葉。「やまじ風」は「世の中に 怖いものが 四つあり 地震雷 火事やまじ風」という狂歌にも登場し、この「地震・雷・火事・やまじ風」が「地震・雷・火事・やまじ」となり、さらには「地震・雷・火事・親父」と変化した。
 明治時代になると「野分」「大山嵐」は一般大衆の間で「颶風(ぐふう)・大風」と呼ばれるようになる。森鴎外もハンガリーの劇“Taifun”を「タイフンは大風で颱風をいふ」と紹介している。日本語として「たいふう」が初めて用いられたのは、第4代中央気象台長、岡田武松博士の1907(明治40)年の論文中で紹介された「颱風(たいふう)」。『気象学教科書』では翌1908(明治41)年版からこの語を採用した。また1946(昭和21)年の当用漢字制定時に「颱」が常用漢字からはずされたことに伴い、「台風」と書くように改められた。


2003.07.15 作成
2006.07.16 更新

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投稿者: たろう

京大進学を目指す学習塾教室長・40代独身。お嫁さん随時募集中。