0103.ブルガリアヨーグルト
 FAO(国連食糧農業機関)・WHO(世界保健機関)の国際規格で、「ヨーグルトとは、ブルガリア菌及びサーモフィラス菌の作用により、乳及び乳製品を乳酸はっ酵して得た凝固乳製品をいう。任意添加物(粉乳・脱脂粉乳・ホエー粉など)の添加は随意だが、最終製品中には、これらの微生物が多量に生存していなければならない」と定義されている。このうち「ブルガリア菌」を使用したヨーグルトを、ブルガリアヨーグルトと呼んでいる。
 ヨーグルトの起源は古代トラキア人といわれている。歴史上最初にブルガリアヨーグルトに関する記述が登場するのは、紀元前5世紀ごろの歴史家・ヘロドトスの著作に登場する。古代ローマの詩人ウェルギリウスもトラキア人がヨーグルトに馬の血を混ぜて飲んでいる、と記している。
 このヨーグルトからブルガリア菌を発見したのは、ブルガリアの医学博士スタメン・グリゴロフ(1878-1945)で、1905年、パリの世界的な細菌学研究機関・パスツール研究所でのことである。この菌は乳酸菌のように牛乳を発酵させる特殊作用があるが、ブルガリア山中にしか生息しないというもので、1908年に発見者グリゴロフの名を冠して「ブルガリコム」(Bacillus bulgaricus(Grigorov))と命名された。何度か名称変更があったものの、現在でもグリゴロフの名は残され続けている。
 ブルガリアヨーグルトの故郷ブルガリアでは、国立ブルガリコム開発研究所を設立するなど、ブルガリコムの培養研究を国家プロジェクトとして重視している。同研究所は世界25ヵ国に菌のサンプルを送り「ブルガリアヨーグルト」のブランド名での生産を許可している。
 日本では1972(昭和47)年に明治乳業がパスツール研究所よりブルガリコムのサンプルを送ってもらい、ヨーグルト生産を開始したことが始まりである。翌1973(昭和48)年「明治プレーンヨーグルト」の名で発売された。「ブルガリア」の名がないのは、この当時ブルガリア政府が「ブルガリアヨーグルト」の名称を許可しなかったためで、同政府に許可されてからは「ブルガリアヨーグルト」の名称で販売されるようになった。
 また、ブルガリアヨーグルトには胃腸など消化器系の病気や肥満などに効果があり、その医療効果にも注目されている。
 ブルガリアには「聖ゲオルギの日」という、キリスト教の殉教者で羊飼いと家畜の守護神とされた聖ゲオルギの祭日があり、この日の食卓には必ずヨーグルトをのせなくてはいけないことになっている。この日から家畜の放牧が始まり、家畜の健康と豊穣を願い様々な儀礼が行われる。昔は冬期間の乳絞りがなかったため、家畜の健康と豊饒を祝う5月6日の聖ゲオルギの日がその年初めてヨーグルトを作る日として、最も盛大に祝われた。この日に初めて搾った乳を、その日の朝、植物についた乳酸菌を多く含む朝露を集めてミルクに入れてヨーグルトを作り、これを家族全員あるいは村人全てを招いて一緒に食べた。この時作られたヨーグルトをスターター(種菌)として、夏の終わりを告げる10月26日の聖ディニタルの日までヨーグルトを作り続ける。この日から翌年の聖ゲオルギの日までは作り置いたヨーグルトを食べることになっている。
 また、ブルガリアのヨーグルト料理は歴史があるだけにバリエーションが豊富で、水と少量の塩を入れ冷やして飲むアイリャンや、キュウリやニンニク、パセリなどを混ぜたスープ風のタラトールなどがある。
 また、ブルガリアはヨーグルトばかりでなく、ワインの一大産地としても有名である。

作成 2004.05.13/更新 2004.05.13
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