0117.アガサ・クリスティー失踪事件
 エルキュール・ポアロやミス・マープルを創造した、世界的に有名な推理作家のアガサ・クリスティー。彼女は『アクロイド殺人事件』を発表した1926年、失踪騒ぎを起こしたことがある。
 1926年12月3日午後11時すぎ、当時36歳だった彼女は自宅から突然姿を消した。翌朝早く自宅から1時間ほど離れた、モリー州ギルフォードの少し先のニューランズ・コーナーの田舎道でアガサの乗り捨てられた車を発見、自宅は報道陣に取り囲まれ、多数の警官ともっと多くのボランティアが、山や林や池のなかまで彼女を探し回った。捜査は10日間続けられたが、12月13日、自宅からかなり離れたロンドンの北西約200kmにある保養地・ハロゲートのホテルに泊まっている、ミセス・ニールと名乗る女性がアガサに似ていることが分かり、夫のアーチーが確認した。しかし彼女は夫が誰か、そして自分が誰か分からず、彼女自身「自分の運転していた車が木にぶつかって気がついたらホテルにいた」と話しているように、この間の記憶をまったく失っていたらしい。
 アガサは当時、お金がいるのに小説の筆が進まず悩んでいた。その最中に最愛の母が亡くなり、残された古い家の片付けに6週間も働き続けた。疲れ果てて自宅に帰ると、夫がゴルフ仲間のナンシー・ニールと恋仲になって、強く離婚を求めていた。これらことがアガサの記憶喪失の原因になったと考えられる。
 ただ、彼女の失踪事件をめぐり「夫の浮気がもとで夫婦ゲンカとなり家を飛び出したのが真相で、記憶喪失はお互いの立場を守るための狂言だった」など、さまざまな憶説が存在する。しかし誠実で控えめな彼女の性格を考えると、やはり記憶喪失になったのが真相と思われる。
 その後彼女は家族や医師の協力のもと回復、数多くの傑作を残した。1928年アーチボルドと離婚。1930年9月11日、14歳年下のマックス・マローワンと再婚。彼とはアガサが1976年1月12日に生涯を終えるまで仲の良い夫婦として知られていた。

作成 2004.06.24/更新 2004.06.24
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