「オオカミは人を襲う」、この類の話は古くから世界各地で話されている。『赤ずきん』に代表されるように、童話やおとぎ話の世界でもオオカミといえば人を襲う悪役というのが定番で、人類の中ですっかり定着した概念となっている。そのためか、かつてカウボーイたちは、家畜を襲うオオカミを駆除するために、彼らのえさになりそうな獣たちに毒を塗って歩いていた。
では、実際のところはどうなのだろうか?正解を先にいうと「ほとんどNO」である。「ほとんど」というのは、実際数件の記録が残されており、森林伐採や彼らのえさとなる動物たちが人間のハンターたちによって乱獲され生息地を追われたときなどに、ごくまれなケースとしてやむなく襲うということがあるからである。しかし実際には健康な野生のオオカミは人を襲わないと考えてもよい。
アメリカの動物学者スタンレー・ヤングは1940年にアメリカやカナダで人を襲ったというオオカミの話を初めから調べ、健康な野生のオオカミが人を襲ったことはないという事実を突き止めた。カナダのジェームズ・カランも同様のテーマで調査を行い、彼と同じ結論を出している。1963年にはリー・スミトスが同様の研究を行い、やはり同じ結論に至っている。
健康ではないオオカミ、例えば狂犬病にかかったオオカミは人を襲うが、これは犬やキツネ等も同じことであり、オオカミに限ったことではない。イタリアやアメリカ合衆国のウィスコンシン州などには、人の居住地とオオカミの生息地が重複している地域があるが、オオカミが人を襲ったという報告はまったくない。本来のオオカミは人を避けて生活する動物なのである。かつての日本では、オオカミは害獣としてではなく、むしろ農作物を荒らすシカやイノシシを退治してくれる益獣とみなされ、神として祀る神社が今も残されている。 |
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