0193.顕微鏡
光学式顕微鏡
 光学式顕微鏡に欠かせないレンズは、紀元1000年ごろのイタリアで製造法や研磨法が開発された。15世紀になると、無色透明なクリスタルがラスが開発され、多くの種類の光学レンズが生産されるようになった。
 1590年ごろ、オランダのレンズ職人ハンス・ヤンセンとザハリアス・ヤンセンの親子が2枚の凸レンズを組み合わせると遠くが間近に見えることを偶然発見し「不思議なめがね」として売り出したのが初めての顕微鏡である。ちなみに、望遠鏡もほぼ同時期の発明で、やはりオランダのレンズ職人ハンス・リッペルスハイが発明したといわれている。ヤンセン親子が発明した顕微鏡は、凸レンズと凹レンズを組み合わせただけの単純な構造で、長さ約50cm・直径約5cmという大きさであった。残念ながらこれを使って彼らが何を観察したかという記録は残っていない。
 この技術はイタリアへも伝わり、1610年にはガリレオ・ガリレイも自作の顕微鏡を使って昆虫の複眼のスケッチなどを残している。また彼は自作の望遠鏡を使い木星の衛星の観測も行なっている。
 1625年にはジョバンニ・フェーバーによって、これらの拡大鏡に「マイクロスコープ(顕微鏡)」という名前が付けられた。東洋では1700年に翁山屈大均の著した『広東新語』の中で、初めて「顕微鏡」という言葉が登場している。
 現在のスタイルの顕微鏡を開発したのは、イギリスの科学者ロバート・フック(1635-1703)だといわれている。1665年、彼は接眼レンズと対物レンズを組み合わせた複式顕微鏡を使いコルクの研究をしているうちに細かな仕切りがあることを発見、1665年に発表された、彼の製作した顕微鏡を用いてさまざまな生物を観察した記録“Micrographia(顕微鏡図譜)”の中で、この仕切られた部屋のことを“Cell(細胞)”という名前で発表した。フックの用いた顕微鏡は150倍ほどのものであったと考えられているが、像がぼやけ、性能はあまり良いものではなかった。それでも彼は顕微鏡学派といわれ、ありとあらゆるものを顕微鏡で観察し、後の細菌学の発展に大きく貢献することとなった。
 一方、オランダのアマチュア生物学者アントニ・ファン・レーウェンフック(Antoni Van Leeuwenhoek/1632.10.24-1723.8.26)は、自ら磨いたレンズ1個を金属板の中央にはめ込んだだけの単式顕微鏡を作製。この顕微鏡は大変優れたもので、最高のもので270倍もの倍率であったといわれる。彼はこの顕微鏡を使い、1670年代にバクテリア、精子、赤血球などを次々と発見、後に「微生物学の父」と称されるようになった。
 その後の200年間、顕微鏡は金具の改良が行なわれた程度で、レンズそのものに変化はなかった。しかし19世紀、ドイツのカール・フリードリッヒ・ツァイス(Carl Friedrich Zeiss/1816.9.11-1888.12.3)が、倍率600~700倍という高性能の複式顕微鏡を開発、1866年以降はイエナ大学で教鞭をとっていた物理学者・数学者のエルンスト・カール・アッベ(Ernst Karl Abbe/1840.1.23-1905.1.14)の協力の下、さらなる改良が加えられた顕微鏡が開発されていった。これにより今まで観察が困難だった細胞内の構造をよりよく知ることができるようになり、細胞学が急速に進歩していった。
 その後も光学式顕微鏡は改良が加えられ、より精密な観察が行なえるようになっている。

電子顕微鏡
 光学式顕微鏡の場合、光の波長の関係上、どうしても解像度や分解能に原理的な限界が生じてしまう。そこで、光の代わりに電子を使用した電子顕微鏡が1931年にドイツのマックス・クノール(Max Knorl/1897.6.17-1969.11.6)、エルンスト・ルスカ(Ernst August Friedrich Ruska/1906.12.25-1988.5.25)の考案に基づいて開発された。これにより従来の光学式顕微鏡よりも1000倍の解像度を持つ、10万倍もの倍率での観察が可能となり、最近よりもより小さなウイルスの発見にも貢献した。
 このとき開発された電子顕微鏡は「透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)」と呼ばれるもので、光学式顕微鏡が対象物に光を当て、その光を透かして観察するように、電子を対象物に当て透過してきた電子の密度の違いにより観察するというもの。その一方で「走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)」というタイプの電子顕微鏡もある。対象物に電子を当てるまでは同じだが、こちらは対象物に当たった電子の反射を読み取って像にするという仕組み。ちょうど、印刷物をスキャンして画像を読み取るのと同じような原理である。このタイプの電子顕微鏡は1935年に先述のクノールによって原理が示され、1937年にマンフレート・フォン・アルデンヌに試作品が作成された。しかし、当時はTEMの開発に力が注がれ、SEMが実際に活躍し出すのは1950年代から。
 その後も改良が加えられ、現在では原子レベルの観察ができるレベルにまで達している。

作成 2006.08.14/更新 2006.08.14
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