0199.渡り鳥の渡りの仕組み
 渡り鳥の中には、毎年何千キロ、何万キロもの距離を決まったルートで旅するものもいる。ではなぜそれらの鳥たちはそのルートが分かるのだろうか?太陽や星座などを羅針盤がわりに利用し、それを体内時計に照らし合わせて自分たち地の現在の飛行位置を確かめていることは以前より知られていたが、そうすると曇りや雨の日など、太陽や星座を利用できないときでさえ、極めて正確な飛行ルートで旅ができる理由の説明がつかない。そのような時に活躍するのが渡り鳥の体内に存在する「磁性細菌」である。
 1971年、アメリカ・ニューヨーク州にあるコーネル大学のウィリアム・キートン博士が伝書バトによる「ハトの方向感覚」という研究の中で、ハトの方向感覚は「太陽光」「視覚記憶」「磁気感覚」のうちのいずれかであるとの仮説を立てた。1975年、当時マサチューセッツ工科大学の学生だったR・P・ブレイクモアが、キートン博士の仮説の一つである「磁気感覚」を裏付けるものの一つとして、海底の泥の中から体内に磁石を持った細菌を発見した。1979年にはこのバクテリアから「体内磁石」が発見されている。その後の研究で、ハトだけではなく他の渡り鳥やサケ、ミツバチ、さらにはヒトの脳内からも同様の細菌が発見されている。この細菌は体内に50~100ナノメートル(1ナノメートルは1億分の1メートル)の大きさの、「マグネタイト」と呼ばれる磁性を持った磁鉄鉱の鉄酸化物の結晶を10~20個持っている。このようにして渡り鳥や回遊魚などは、方向を知る一つの手段として、0.5ガウスという微弱な地磁気を脳内に存在する「磁性細菌」が感知するということが判明した。
 また、鳥類や魚類の内耳には、哺乳類にはない「壷嚢」と呼ばれる方向センサーあり、その中で磁力を持った耳石が方位磁石のように地磁気の影響で向きを変え、その動きを感覚毛が感じ取って方向を感知しているとも考えられている。
 渡り鳥はこれらの生体コンパスを元に、自分の現在位置を確認しながら地球規模での旅行を行なうが、磁気感覚はあくまで「現在位置の確認」であって「飛行ルート」を決定付けるものではない。以前、ドイツの科学者アンドルー・ヘルビック氏は、イギリスの科学誌『ニューサイエンティスト』の中で、多くの若い渡り鳥たちが仲間の助けもなく一羽で移動できるのは、その遺伝子に「飛行ルート」が書き込まれているからであるとの研究結果を発表している。
 彼はズグロムシクイという渡り鳥を研究。この鳥はドイツとオーストリアにそれぞれ生息しており、ドイツ組は秋になると南西方向に飛び、地中海西部で冬を過ごすのに対し、オーストリア組は南東方向に飛び、地中海東部で南に方向を変えて東アフリカに向かう。そこでこの双方を掛け合わせて生まれた鳥の飛行ルートを調べると、両親のコースの中間のほぼ南へ飛ぶことが判明した(このコースだとサハラ砂漠に到着することになり、そこで死に絶えてしまう)。このことから、渡り鳥は両親から半分ずつの飛行ルート遺伝子を受け継ぎ、それにしたがって行動していることが判明した。

作成 2006.11.06/更新 2006.11.06
科学
<0198  北海道雑学研究会TOP  0200>

copyright (c) Hokkaido Zatsugaku Society