イギリスを代表する児童文学として思い浮かぶ作品のひとつに、ルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)の『不思議の国のアリス』が挙げられます。
この話はどのようにして誕生したのでしょうか?主人公のモデルとなった女の子は、その後どのような人生を送ったのでしょうか?
はじまりは仲の良かった少女へ聞かせた即興話
『不思議の国のアリス』は、キャロルがオックスフォードのクライスト・チャーチ・カレッジの学寮長ヘンリー・リデルの娘、ロリーナ、アリス、イーディスとピクニックに行った時に、即興で作って聞かせた話が原型となっています。
彼はこのような即興話を、以前からよく三姉妹に話して聞かせていましたが、『不思議の国のアリス』の原型となったこの時の話を、当時10歳だったアリスが大変気に入り、文字の形に残しておいてほしいとお願いしました。
キャロルはこの話をさらに膨らませ、1864年『地底の国のアリス』という名前の手作りの本を、クリスマスプレゼントとして、アリスにプレゼントしました。これを見たキャロルの友人で、人気作家でもあったジョージ・マクドナルドとその家族のすすめにより出版、広く世に知られるようになりました。
物語のモデルとなったアリスのその後
ところで、この話のモデルとなったアリスは、その後どのような人生を送ったのでしょうか?
アリスが11歳だった1863年に、何らかの出来事がきっかけで、キャロルとアリスの家族は疎遠な関係になってしまいました。キャロルからの結婚の申し込みをアリスが断り、それ以来アリスとその家族とは疎遠になってしまった、という話が有名ですが、実はこの話は事実ではないようです。しかし、疎遠な関係になってしまったのは事実です。
彼女はのちに、クライストチャーチに入学した、ヴィクトリア女王の四男であるレオポルド・ジョージ・アルバート王子と恋仲になりますが、王子の卒業とともにその恋は終わりを告げます。身分違いというのがその理由でした。しかし、二人の交流自体は、その後も続いたようです。アリスの結婚相手は、キャロルの大学の後輩で、大地主でもある治安判事レジナルド・ジャーヴィス・ハーグリーヴスで、28歳の時でした。
アリスが80歳となった1932年、ルイス・キャロル生誕100周年を記念し、コロンビア大学から名誉文学博士号の称号を受けました。それから2年後の1934年、アリスは82歳で亡くなりました。
キャロルからもらった手作りの本はどうなった?
アリスがキャロルからもらった、世界にたった1冊しかない『地底の国のアリス』の本は、その後もしばらく彼女の手もとにありました。
しかし、1926年、夫と死別し経済的に苦しくなったアリスは、キャロルからもらった本を競売に出す決意をします。
1928年、15400ポンドで、アメリカの書籍ディーラーであるローゼンバックの手に渡り、さらに別のコレクターの手に渡りますが、1948年に有志によりイギリスへ戻され、現在は大英博物館に所蔵されています。
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