軍隊食から国民食に!みんな大好きカレーライス


2017.07.11 撮影

 今や日本の国民的代表食の一つとしておなじみの「カレーライス」。最近では海外でも「日本式カレー」として人気があります。
 さて、カレー発祥の地といえば、当然インドですが、現在日本で一般的に食べられているカレーライスはイギリス海軍のカレーが由来となっています。



イギリス海軍の保存食だったカレー

 一般的に、質素な食事をするイギリス人に好んで食べられる料理の一つが、栄養バランスのとれたメニューであるシチューです。しかし、シチューは味付けに使う牛乳が日持ちしないため、船乗りたちは長い航海をしている間、食べるのを我慢しなくてはいけないメニューでした。

 そこで彼らは、シチューと同じ食材(肉・人参・ジャガイモ・玉ねぎなど)で、航海中いつでも栄養のバランスの取れた食事ができないものかと考えた末、長持ちする香辛料を使ったカレーパウダーを考案しました。これが七つの海を制するといわれた大英帝国海軍の軍隊食として定着していったのです。

イギリス海軍のカレー、日本海軍に採用される

 一方、日本では19世紀後半に新しい世の中となり、西洋の食文化が数多く紹介されるようになりました。そのような時代の中で、イギリス海軍を手本として成長していった日本海軍は、兵士たちの健康と体力を維持のため、どのような食事が適切か、考えられていました。その中で目を付けたのが、イギリス海軍で食べられているカレーでした。

 初めはイギリス人と同じようにカレーをパンにつけて食べていましたが、当時の日本人にとってこの食べ方はどうしても馴染むことができませんでした。そこで、パンのかわりにお米にかけてみたところ、これがたいへん評判が良く、カレーライスが海軍食として定着していきました。これが現在日本で一般的に食べられているカレーライスの原形です。

明治時代のカレーのレシピ

 日露戦争当時、主に農家出身の兵士たちに白米を食べさせることとなった、大日本帝国海軍・横須賀鎮守府が、手軽に料理ができて肉と野菜の両方がとれる、バランスの良い食事としてカレーライスを採用しました。海軍当局は、カレーライスの作り方を、1908(明治41)年9月1日に発行された『海軍割烹術参考書』に載せ、その普及につとめました。その原文には…

 初メ米ヲ洗ヒ置キ牛肉(鶏肉)玉葱、人参、馬鈴薯ヲ四角ニ恰モ賽ノ目ノ如ク細ク切リ別ニ「フライパン」ニ「ヘッド」ヲ布キ麥粉ヲ入レ狐色位ニ煎リ「カレイ粉」ヲ入レ「スープ」ニテ薄トロノ如ク溶シ之レニ前ニ切リ置キシ肉野菜ヲ少シク煎リテ入レ(馬鈴薯ハ人参玉葱ノ殆ンド煮エタルヲ入ル可シ)弱火ニ掛け煮込ミ置キ先ノ米ヲ「スープ」ニテ炊キ之ヲ皿ニ盛リ前ノ煮込ミシモノニ塩ニテ味ヲ付ケ飯ニ掛ケテ供卓ス此時漬物類即チ「チャツネ」ヲ付ケテ出スモノトス

『海軍割烹術参考書』より

 と、あります。要約すると、

  1. 米をとぐ
  2. 牛肉(または鶏肉)・玉ねぎ・人参・ジャガイモを賽の目状に切る
  3. フライパンにヘット(牛脂)をしいて小麦粉を炒る
  4. 小麦粉がキツネ色になったらカレー粉を加え、とろみが付くまでスープを入れる
  5. 2の肉・野菜を炒め4に入れ、弱火で煮る
    (ジャガイモは玉ねぎ・人参がほぼ煮えてから入れる)
  6. 1の米をスープで炊き、皿に盛る
  7. 5に塩を入れて味付けし、6で炊いた米にかける
  8. チャツネ等の漬物類を添えて出来上がり

 となります。

海軍カレーから国民食へ

 日本海軍のカレーライスは、太平洋戦争中の食糧事情の変化で、牛肉ではなく豚肉が使用された時期もありましたが、カレーライスが海軍食として、引き続き採用されていました。戦後、復員した兵士たちがこの海軍カレーを広めたことで、カレーライスが全国の家庭に広まっていきました。

 現在でも海上自衛隊では、海の上の単調な仕事でなくなりがちな曜日の感覚を取り戻すため、また、作りすぎて余ってしまっても、基地から外出せず週末に居残った隊員が手軽に食べることができるという現実的な理由から、毎週金曜日の昼食を「カレーの日」と決め、栄養のバランスを考え、カレーに牛乳とサラダをつけたメニューを全ての部署で食べるという習慣になっています。

 また、海軍カレー発祥の地となった横須賀市では、1999(平成11)年「カレーの街」を宣言し、先ほど紹介した『海軍割烹術参考書』のレシピをもとに「よこすか海軍カレー」を再現させました。

 よこすか海軍カレーであると認められるには

  1. カレー粉・小麦粉・肉(牛または鶏)・人参・玉ねぎ・ジャガイモを入れること
  2. カレー粉・小麦粉を炒ってルーを作ること
  3. 原則としてカレーライス・牛乳・サラダの3点セットで提供し、薬味にチャツネをつけること

 この3つの条件さえクリアしていればよく、他は自由にアレンジしても良いことになっているので、レシピどおりに作られたものからオリジナリティにあふれたものまで、横須賀のカレー店ではさまざまな海軍カレーを楽しむことができます。