あなたは「スイス銀行」と聞いて、何を思い浮かべますか?
大物政治家や大富豪、王侯貴族たちの隠し口座、犯罪組織が資金洗浄する場所などといったイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「ロシア革命で滅亡したロマノフ王家の隠し資産が眠っている」
「ナチス・ドイツが各地で略奪した財宝が眠っている」
たしかに番号だけで登録できる秘密口座を作ることができるので、そういった噂が絶えない場所でもあります。
ではなぜ、スイス銀行にはそのような噂が絶えないのでしょうか?
「スイス銀行」という銀行は存在しない?
実は「スイス銀行」という銀行は存在しません。
国立銀行の「スイス・ナショナルバンク」、民間の「スイスバンク・コーポレーション」「ユニオンバンク」「クレディースイス」など、スイスに本拠地があり、預金または信託業務を行う全ての銀行をまとめて「スイス銀行」と呼んでいます。そのすべての銀行で秘密口座を扱うことができます。
単なる秘密口座なら香港やシンガポールにもありますが、スイスの場合「スイス連邦銀行業および貯蓄銀行法(スイス銀行法・1934年11月8日制定)」で守秘義務が定められていて、警察や税務署からの問い合わせに対しても絶対に秘密を漏らす事はありません。もし機密が漏れた場合には、厳しく罰せられることになっています。
またナンバーアカウントという身分証明さえできれば、外国人でも秘密口座を作ることができるため、大変人気があります。
もちろん相手が犯罪組織であっても作ることができるため、犯罪がらみの問題がよく起こり、この制度を見直そうという動きが出たこともあります。
しかし、世界中からお金が集まるこの制度はスイス国民にとってはむしろ大歓迎で、結局国民投票でも約3倍の差で現状維持となってしまいました。
また、スイスのプライベートバンク(個人の資産をまとめて管理する銀行業務のこと。以下PBと略す)の他の特徴として「安全・確実な資産管理」というものがあります。
日本の銀行のように、預金を企業に貸し出して利益を稼ぐという形をとっていないため、不良債権というものが発生しません。また、万一不良債権が生じたとしても、それで預金がけっして目減りしないような仕組みになっています。
スイス銀行の資金管理がここまで厳重になった理由は?
ではなぜ、スイスの銀行はこれほど厳重な管理制度になっているのでしょうか?
これは初期のPBの顧客の多くが、王侯貴族であったことによります。
特に、フランス革命で祖国を追われ、自分の資産が革命政府に没収されかねなかった亡命貴族がスイスのPBの重要な顧客だった、ということもあります。
そのためスイスの銀行は、多くの騒乱に明け暮れた近代ヨーロッパにおいて、大富豪たちを中心とする顧客の資産をしっかりと守るノウハウを培ってきました。
そういった経緯もあって、スイスの銀行は、どのような顧客であっても決して外部に秘密を漏らすことのない、しっかりと資産を守ることができる銀行となりました。
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